はじめに

日本では少子高齢化が進行し、中小企業の後継者不足が大きな社会課題となっています。
中小企業庁によると、2025年までに70歳以上となる中小企業経営者は約245万人にのぼるとされており、そのうち約半数が後継者未定の状況にあるといわれています。

こうした状況下で、**事業承継やM&A(企業の合併・買収)**は、企業の存続と地域経済の維持に欠かせない手段となっています。
しかし、事業承継・M&Aには専門的な手続きや多額の費用が伴い、資金面・法務面で多くの中小企業がハードルを感じているのが実情です。

このような背景を踏まえ、国は **「事業承継・引継ぎ補助金」**という制度を設け、企業が安心して事業承継・M&Aを進められる環境整備を進めています。
補助金を上手に活用することで、費用負担を軽減し、スムーズな事業承継の実現が期待できます。

一方で、補助金申請には煩雑な書類作成官公庁とのやりとりが必要となり、専門的な知識が求められる場面も多々あります。
その際に心強い存在となるのが、行政書士です。
行政書士は補助金申請に必要な各種文書の作成や法務手続きのサポートを行い、経営者が本業に集中できるよう後方支援を行います。

本記事では、事業承継・M&A補助金とは何か行政書士がどのような支援を行えるのかについて詳しく解説します。
これから事業承継やM&Aを検討されている方、補助金活用を考えている方にとって役立つ情報をお届けします。

事業承継・M&A補助金とは?

制度の目的と概要

「事業承継・引継ぎ補助金」(以下、事業承継補助金)は、中小企業庁が実施する補助制度であり、事業承継やM&Aを通じて地域経済の活性化と雇用維持を図ることを目的としています。

中小企業・小規模事業者が事業承継や事業再編を行う際には、専門家費用・手続き費用・設備投資費用など、さまざまなコストが発生します。
この補助金は、そうした費用の一部を補助することで、円滑な事業引継ぎを後押しするものです。

補助金の公募は毎年度行われており、一般的に 事業承継・M&Aを行う予定の企業承継支援機関・士業事務所と連携して支援を受ける企業などが対象となります。

補助対象となる経費の例

事業承継補助金では、以下のような経費が補助対象となります(※制度内容は年度ごとに変更されるため、公募要領を必ずご確認ください)。

補助対象経費の主な例内容
M&A仲介手数料M&A仲介業者に支払う手数料
デューデリジェンス費用財務・法務調査に要する費用
士業専門家費用行政書士、弁護士、公認会計士等への報酬
契約書作成費用事業譲渡契約書などの作成費
許認可・登録変更費用必要な行政手続き・変更届出費用
設備投資費用事業引継ぎに伴う設備導入費用
教育研修費承継後の従業員教育にかかる費用

補助金の公募時期と採択状況

過去の採択実績をみると、申請書の完成度や事業計画の実現可能性が採択の成否に大きく影響しており、行政書士のサポートが採択率向上につながるケースが多いと報告されています。

行政書士が支援できること

事業承継・M&A補助金の申請では、制度要件の理解正確な書類作成が不可欠です。
行政書士は、こうした官公庁手続や法務文書作成の専門家として、補助金申請の各段階で多様な支援を行います。

ここでは、行政書士が関与できる主な支援内容をご紹介します。

補助金申請書類の作成・提出

補助金の申請時には、以下のような多岐にわたる書類を整備する必要があります。

  • 交付申請書
  • 事業計画書
  • 収支予算書
  • 実績報告書
  • 証拠書類(契約書、領収書、証明書 等)

行政書士は、制度要件に沿った正確な文書作成を行い、不備や誤記載による差戻し・不採択のリスクを低減します。
また、提出後の官公庁とのやりとり(質疑応答、補正対応)もサポート可能です。

契約書・同意書類の作成

事業承継・M&Aに伴っては、以下のような契約文書の作成が求められます。

  • 基本合意書(LOI)
  • 秘密保持契約書(NDA)
  • 事業譲渡契約書
  • 株式譲渡契約書
  • 業務委託契約書

行政書士は、これらの契約書のドラフト作成リーガルチェックを通じて、当事者間の合意内容が法的に適正かつ明確になるよう支援します。

※なお、訴訟性を伴う法的助言・代理は弁護士の領域となります。その場合は弁護士と連携して進めます。

許認可・登録変更手続きのサポート

事業承継やM&Aでは、事業主体が変更されることにより、以下の手続きが必要になるケースが多くあります。

  • 営業許可(飲食業、建設業、運送業 等)の名義変更
  • 産業廃棄物収集運搬業許可の承継
  • 古物商許可の名義変更
  • 法人登記簿の変更(代表者変更、目的変更)に伴う届出

行政書士は、こうした許認可・登録変更に関する行政手続きを適切に代行または支援し、承継後の事業継続がスムーズに行えるようサポートします。

公的証明書の取得・資料整備

補助金申請では、以下の公的証明書や添付資料が必要になることがあります。

  • 履歴事項全部証明書(登記簿謄本)
  • 納税証明書
  • 印鑑証明書
  • 定款の写し
  • 営業許可証の写し

行政書士は、必要な証明書類の取得・整備をサポートし、申請書類全体の一貫性・整合性の確保に貢献します。

他士業との連携による包括的な支援

事業承継やM&Aは多方面の専門知識を要するため、以下の士業と連携することが重要です。

  • 税理士:税務申告、株価評価、税制優遇措置の適用支援
  • 司法書士:登記手続き全般
  • 弁護士:契約交渉、訴訟対応
  • 中小企業診断士:事業計画策定、経営分析

行政書士は、こうした士業と連携窓口となり、依頼主にとって一元的な支援体制を提供する役割も担います。

行政書士に依頼するメリット

事業承継・M&A補助金は、自社で申請することも可能ですが、専門家である行政書士に依頼することで多くのメリットが得られます。
ここでは主な利点をご紹介します。

法令遵守と安心感

補助金申請は、補助金適正化法各種補助金要綱に沿った形で行う必要があります。
申請書類の内容に不備や誤りがあった場合、最悪の場合補助金の返還請求事業者名の公表といったリスクもあります。

行政書士は法令に精通した国家資格者であり、補助金制度に関する最新のガイドラインを踏まえて書類作成を行います。
法令遵守を確保することで、安心して補助金を活用できる環境が整います。

申請事務の効率化

事業承継・M&A補助金の申請にあたっては、膨大な申請事務作業が発生します。
具体的には以下のような作業が含まれます:

  • 補助金制度の詳細把握と要件確認
  • 申請スケジュールの管理
  • 必要書類・証明書の取得
  • 提出資料の整備と申請フォーマットへの落とし込み
  • 官公庁との質疑応答対応

これらを経営者や担当者がすべて自力で対応するのは大きな負担となります。
行政書士に依頼することで、こうした煩雑な事務作業の大部分をアウトソースでき、企業側は本業に専念することが可能となります。

採択率アップへの寄与

補助金の採択可否は、申請書の完成度に大きく左右されます。
「どのような事業目的で補助金を申請するのか」「どのような成果が見込まれるのか」といった説得力のある記載が求められます。

行政書士は審査の観点を踏まえたポイントを押さえた書類作成を行うことができるので、
採択率が向上する効果が期待できます。

申請後のフォロー体制

補助金は交付決定後にも以下のような手続きが求められます。

  • 実績報告書の提出
  • 支出証拠資料の整備
  • 成果報告書の作成
  • 補助金受領後の経過報告

行政書士は補助金の申請から実績報告・受領まで一貫したサポートを提供可能です。
これにより、途中で手続きを放置してしまったり、補助金が受領できないといったリスクを防止できます。

行政書士に依頼する際の注意点

行政書士に事業承継・M&A補助金申請を依頼することは非常に有効ですが、依頼する際に押さえておくべき注意点も存在します。
事前に理解しておくことで、円滑な進行不要なトラブルの回避が可能になります。

業務範囲の明確化

行政書士は官公署に提出する書類の作成手続き代理を行うことが法律上認められていますが、他士業の独占業務には関与できません

例えば:

  • 税務申告・税務相談は税理士
  • 登記手続きは司法書士
  • 訴訟代理や法律相談は弁護士

にしか行えない業務です。
行政書士に依頼する際は、担当できる業務範囲を明確に確認し、不足する部分は適切な士業と連携することが重要です。
これにより、法令遵守を確保しつつワンストップの支援体制を構築することができます。

報酬体系・費用の確認

行政書士への報酬は事前に明確に取り決めることが大切です。
特に補助金申請業務は成果報酬型着手金+成果報酬型などさまざまな報酬形態が存在します。

確認すべきポイント:

  • 申請書作成・提出にかかる基本報酬
  • 申請が不採択となった場合の対応
  • 採択後の実績報告支援にかかる追加報酬
  • 成功報酬の算定基準と支払時期

契約締結時にこれらを**文書化(業務委託契約書)**し、後々のトラブルを防止することをお勧めします。

適切な士業連携の重要性

前述の通り、事業承継やM&Aは多方面にわたる専門知識が求められます。
行政書士が単独で全ての業務を対応することは困難なケースも少なくありません。

信頼できる行政書士は、他士業とのネットワークを活用し、必要に応じて適切な専門家(税理士・司法書士・弁護士・中小企業診断士など)を紹介・協働してくれます。
依頼時には他士業との連携体制が整っているかどうかを確認することが、安心して任せられる事務所選びのポイントの一つです。

まとめ

事業承継・M&A補助金は、事業承継やM&Aに伴う資金的な負担を軽減し、中小企業の円滑な事業引継ぎを支援する重要な制度です。
一方で、申請にあたっては高い正確性が求められる書類作成煩雑な官公庁手続きが伴うため、専門的なサポートが欠かせません。

行政書士は、次のような形で補助金活用を力強く支援します:

  • 補助金申請書類の作成・提出
  • 契約書・同意書類の作成
  • 許認可・登録変更手続きの代行
  • 必要な証明書類の取得・整備
  • 他士業との連携による総合的な支援

こうしたサポートにより、申請事務の負担軽減採択率向上が期待できます。
さらに申請後の実績報告や補助金受領まで一貫したフォロー体制が整っている点も大きなメリットです。

事業承継やM&Aを安心して進めたいとお考えの方は、ぜひ一度 行政書士に相談してみてはいかがでしょうか。
千葉県内を中心に、全国対応可能な行政書士も増えており、地域の状況に応じた柔軟な支援が受けられるのも心強いポイントです。

行政書士オフィスおおきでも、事業承継・M&A補助金に関するご相談を承っております。
ご不明な点やご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

FAQ

行政書士に依頼できる具体的な範囲は?

行政書士は 官公署に提出する書類の作成・提出代行契約書・同意書類の作成許認可手続きの支援などを担当できます。
税務申告や登記申請、法律相談・訴訟対応は、それぞれ税理士・司法書士・弁護士が担当する領域となります。

補助金申請は自分でも可能?

可能ではありますが、要件の確認や必要資料の整備、申請事務の煩雑さを考えると専門家のサポートを受けた方がスムーズかつ安心です。
また、行政書士によるサポートにより 採択率が向上する可能性もあります。

他士業との違いは?

行政書士は 行政手続きと文書作成のプロフェッショナルです。
税理士(税務)や司法書士(登記)、弁護士(法律業務)などと役割を分担しながら、補助金申請に必要な部分を包括的にサポートする立場となります。
信頼できる行政書士は、必要に応じて他士業との連携体制も整えています。