はじめに
突然「違法建築物だから除却(取り壊し)してください」という通知が届いたら、驚きと不安でいっぱいになることでしょう。
長年使ってきた建物や相続した古い家など、意図せず「違法建築物」となっているケースは意外と少なくありません。
しかし、このような通知を 放置することは絶対に避けるべき です。
対応を誤ると、強制的に建物が取り壊され、費用を請求される「代執行」という措置が取られることもあります。
本記事では、違法建築物の除却命令を受けた際の 正しい対応の流れ と 注意点 を、千葉県内の実例も踏まえつつ、行政書士の視点からわかりやすく解説します。
一人で悩まず、参考にしていただければ幸いです。
違法建築物とは?
違法建築物の定義
「違法建築物」とは、簡単にいえば 法律や条例に適合していない建物 のことです。
建築基準法などの法令に違反している場合、たとえ長年使用していても「違法」と見なされ、行政から是正や除却を求められることがあります。
具体的にはどのような建物か?
主な例として、以下のようなものが挙げられます:
- 建築確認申請をしていない まま建てられた建物
→ 建築基準法第6条により、原則として建築確認が必要です。 - 建築確認を受けた後に無許可で増改築した 建物
→ 計画変更の手続きを経ずに改築すると違法になります。 - 建築基準法の規定(耐震性、避難経路、防火規定など)に違反している 建物
→ 時代の法改正で現在の基準に適合していない場合もあります。 - 用途地域に違反している 建物
→ 例えば「第一種低層住居専用地域」にある住宅を無断で店舗に転用するなど。
よくあるケース
- 古い家屋を相続した際に未登記・無確認であることが発覚
- 親族が無許可で増築した部分が問題視される
- 以前は許可された用途が、用途変更後の届出をしていなかった
こうした場合、「違法建築物だからすぐに取り壊さなければならないのか」と慌てる前に、 現状を正確に把握し、専門家に相談 することが重要です。
除却命令とは?
除却命令が出される理由
「除却命令」とは、簡単にいえば 法律違反状態の建物について、行政が「取り壊してください」と命じる措置 です。
その背景には、地域の安全や生活環境の保全といった重要な目的があります。
主な理由は以下のとおりです:
- 耐震性・安全性に重大な問題がある
→ 倒壊や火災などの危険を及ぼす恐れがある場合。 - 建築基準法などの法令に重大な違反がある
→ 容積率の超過、避難経路の欠如、構造基準不適合など。 - 地域の景観や用途に適合していない
→ 住居専用地域に大規模な営業施設が無許可で設置されているなど。 - 長期間放置され、周囲に悪影響を及ぼしている
→ 廃墟化した建物が倒壊寸前、あるいは不法侵入の温床になっているケース。
法的根拠
除却命令の根拠は、主に以下の法令・規定にあります:
- 建築基準法第9条
→ 違反建築物について、是正・除却・改築・移転などの命令が可能。 - 建築基準法施行規則 や 地方自治体の建築条例
→ 地域独自の判断基準が盛り込まれている場合もあります。
行政からの通知の流れ
除却命令は、通常いきなり「取り壊しなさい」と言われるわけではありません。
段階を踏んで行政手続きが行われるのが一般的です。
- 是正指導(行政指導)
→ 建物所有者に口頭や書面で違反を指摘し、改善を促す段階。 - 改善命令(法的な命令)
→ 指導に従わない場合、正式な行政処分として「改善命令」が出されます。 - 除却命令
→ 改善命令にも従わなかった場合や緊急性が高い場合に「除却命令」が出されます。 - 代執行(最終手段)
→ 所有者が除却命令にも従わない場合、行政が強制的に建物を除却し、費用を所有者に請求します。
この流れのなかで、改善段階での対応 が非常に重要になります。
専門家に相談することで、不要な除却を防げる場合もあります。
除却命令を受けたらどうすればよい?
① まず命令内容を確認
最初にするべきことは、届いた通知や命令書の内容を 冷静に確認 することです。
慌てて行動してしまうと、不必要な費用や手間が発生しかねません。
確認すべきポイントは次の通りです:
- 命令書の発行部署(市役所・県庁のどの課なのか)
- 命令の根拠法令
- 違反とされている内容(構造、用途、耐震性など)
- 除却や改善の期限
不明点があれば、担当部署に連絡して詳細を確認しましょう。
多くの場合、行政側も説明に応じてくれます。
② 専門家に相談する
次に行うべきは、信頼できる専門家への相談 です。
相談先の例としては:
- 行政書士
→ 命令書の法的意味の確認、行政対応のサポート、審査請求手続きなど。 - 弁護士
→ 行政処分の取り消し訴訟の検討、法的争いへの対応。 - 建築士
→ 違反内容の技術的な分析、改善案の提案。
場合によっては 審査請求(行政不服審査法に基づく異議申し立て)や 取消訴訟(行政事件訴訟法に基づく訴訟)を行うことで、除却命令の見直しが可能となることもあります。
③ 具体的な除却準備
もし除却が避けられない場合は、速やかに準備を始めましょう。
- 除却工事業者への見積り依頼
- 行政に対して自主的な除却計画書を提出(場合によっては求められます)
- 工事日程や安全対策の調整
なお、費用は原則として 建物所有者の自己負担 となります。
放置するとどうなる?
違法建築物の除却命令を そのまま放置してしまう と、非常に大きなリスクが発生します。
ここでは、実際に起こりうる事態をわかりやすくご説明します。
代執行(強制的な取り壊し)
除却命令を無視して期限内に対応しない場合、行政は「代執行」という手続きに進むことができます。
代執行とは?
- 行政が自ら建物を取り壊す 強制的な措置です。
- 所有者の了解がなくても実施されます。
- 費用はすべて所有者に請求 されます(非常に高額になることも)。
- 事前に 代執行の予告通知 が届き、公告が行われたうえで実施されます。
※ 根拠法令:行政代執行法第2条、第3条など。
代執行の具体例(一般的な流れ)
- 除却命令の期限到来
- 所有者が除却せず放置
- 代執行予告通知(事前告知)
- 公告(近隣住民や関係者への周知)
- 行政が業者を手配して建物を取り壊し
- 工事費+事務費を所有者へ請求
- 未払い時は財産差押え等が行われることもある
行政罰(過料)の可能性
- 除却命令違反は 刑事罰の対象ではない ことが一般的ですが、建築基準法第99条などに基づき 過料(行政罰)が科されることがあります。
- 金額は数十万円〜百万円規模になることもあります。
- 命令違反そのものの記録 が残り、今後の行政手続きで不利益になる場合も。
所有者以外の責任
意外に見落とされがちですが、所有者以外の関係者 も責任を問われるケースがあります。
管理者・占有者も対象
- 建築基準法第9条の規定上、管理者 や 占有者 にも命令が届くことがあります。
- たとえば賃借人が営業用に使用していた場合、その人物にも是正措置が求められることがあります。
責任の広がり
- 放置状態で事故(倒壊・火災等)が発生すると、民事責任(損害賠償責任) が問われるリスクも高まります。
- 所有者、管理者、占有者のいずれも被害者から訴えられる可能性があります。
放置は「得策ではない」
結論として、除却命令は 「どうせ取り壊さなくても大丈夫だろう」 と放置すると 大変な不利益を被ることになる ため、必ず早期に対応することが大切です。
千葉の行政書士としてできるサポート
違法建築物に対する除却命令は、法律・行政・建築 という複数の専門分野が絡み合うため、一般の方が一人で対応するのは非常に難しいものです。
千葉県内でも、私たち行政書士には以下のようなご相談が数多く寄せられています。
「何から手をつけてよいかわからない」 という方も、どうぞ安心してご相談ください。
1. 文書内容の確認と説明
- 届いた 命令書や通知書の内容 をわかりやすく解説します。
- 違反とされている理由 や、命令が妥当なものかどうかを法令の観点から確認します。
- 不明点の問い合わせ代行 も行います(行政窓口との折衝)。
2. 行政との交渉サポート
- 速やかに 行政との協議窓口を開設 し、依頼者に代わって交渉のサポートを行います。
- 猶予期間の延長交渉 や 除却範囲の限定 の交渉支援が可能です。
- 自主的な改善計画を提出することで、行政側との信頼関係を築くサポートを行います。
3. 審査請求の手続き支援
- 命令に不服がある場合は、審査請求(行政不服審査法に基づく) の手続きをサポートします。
- 必要に応じて弁護士とも連携し、取消訴訟 の可能性を検討する段階の助言も行います。
4. 除却業者の選定支援
- 信頼できる除却工事業者 をご紹介し、見積り取得や工事内容のチェックを支援します。
- 工事後の 報告書作成 や 行政への完了報告 もサポート可能です。
5. 各種書類作成代行
- 除却計画書、改善報告書 など、行政提出が求められる書類の作成を代行します。
- 万が一の場合に備えて、通知への正式な回答書 の作成支援も行います。
- 必要に応じて、登記・相続関係書類の整備サポートも可能です(司法書士との連携含む)。
「一人で悩まないこと」が最初の一歩です
除却命令が届くと、誰しも「どうしたらよいかわからない」という状態になります。
しかし、早めに専門家と連携することで選択肢が広がる ことが少なくありません。
千葉県内の実務経験を活かし、私たち行政書士は 依頼者様に寄り添った対応 を大切にしています。
小さな疑問からでも、まずはお気軽にご相談ください。